当初の計画では馬場島から立山川を詰めて室堂乗越へ、そこから剱御前小舎へ登り、剱沢を滑って、池の平小屋まで登り、標高差500m程を滑って、大窓雪渓を経由して白萩川に戻る周回コースを予定していたが、立山川のスナクボ岩屋で完全に雪が切れていて不可能となった。

しかしこのまま撤収する事なんて有り得ないので、YASUHIROさんの提案で早月尾根を経由した周回コースに変更となった。

再び到着した馬場島からはスキー靴のまま早月尾根を登る。
下部は当然雪がなくてしんどい登りだったが、標高1700m付近から雪が繋がりシール歩行開始。

暫くはシールで登っていたが、一ヶ所難関があって、その時に板を外したタイミングでアイゼン歩行開始。
この時点で既にスズケンさんはアイゼン、YASUHIROさんはシール歩行継続中だった。

アイゼンで歩いていると、「シール歩行の方が楽なんだけどな〜」と感じていたけど、この先必ずアイゼンを履かなきゃいけない事と着脱の面倒さを考えると再び板を履く気も起きなくてどんどん登っていた。

早月小屋には登り始めて約5時間で到着。
ここまでは順調だったが小屋以降はいよいよ条件も厳しくなってくる。
YASUHIROさんもこのタイミングでアイゼンを装着して壺足歩行開始。

小屋から山頂までの標高差800mは積雪期の早月尾根の真骨頂で緊張の連続だった。
掲載画像の通り、
かなりの斜度がある雪壁際どいトラバース落ちたらアウトのプレッシャーetc、数々の難所を越えて山頂へ。

山頂へは早月尾根を登り始めて約9時間、小屋から約4時間で到達。
道程が厳しかっただけに山頂からの光景は素晴らしいものだったし、天候も快晴で360度の大パノラマだった。

しかし、このまま終われば御の字だが甘くないのがこの時期の剱岳。
登ってきたからには降りなければいけない。

雪の状態を見て長次郎尾根の東側を滑ろうという事になりYASUHIROさんが先頭でドロップイン。
数ターンをこなして姿は見えなくなった。
次にスズケンさんもドロップインして、その後に僕も続く。

しかし直ぐにYASUHIROさんが斜面で停止しているのを発見。
「どうしたのかな〜?」と様子を伺っていると何やら不穏な空気。
この後直ぐに判った事だが、実はこの直前に”エッジが掛からなくて転倒、直後にウィペットで緊急滑落停止をして斜面に留まっている状態”と言う事が判明した。

YASUHIROさん自身では身動きが取れない状態で僕たちに「アイゼンを履いてこっちに来てくれ」と言ってきた。
直ぐにアイゼンを装着しようとしたが、少々手こずっているうちにスズケンさんが装着完了してYASUHIROさんの元へ。
その後上手く救出して事なきを得た。
こんな状況でも冷静で的確な指示を出してくれたYASUHIROさんは見事だった。

その後、流石にこの雪質では滑れないと判断して全会一致で早月尾根を降りる事となった。
登りでは相当苦労したので同じ道を降りるのも正直怖かったが、カチカチの斜面を滑って降りるよりはよっぽどマシだと思えた。

下りはかなり慎重に降りる。
往路のトレースがあるので幾分マシだったが、それでも緊張感たっぷりの下山だった。

そして僅か300mの標高差を下るのに3時間近くかかった。

標高2600m付近からようやく雪が緩んできたのでスキー滑降開始。
その後は快適ザラメ山スキー。

早月小屋を越えて登山道の東面を快適に滑りどんどん標高を下げる。
登山道から雪が消える標高1700m以下も東面の雪を繋げて、結局1000m付近まで滑り下りる事が出来た。

標高1000mから林道がある標高800m間は壺足で歩く。
この歩きがまた楽しかった。

ジュラシックパークのジャングルを彷彿させる雰囲気で鳥の鳴き声、せせらぎの音、シダの緑などが素晴らしかった。
その後は林道に合流して馬場島まで歩いて、無事にフィニッシュ地点に到達。
なかなか激しかった剱岳山スキーは16時間で幕を閉じた。

今回の山スキーは今シーズン最後?に相応しい山行だったと思う。
今シーズンはYASUHIROさんのお陰で沢山の経験が出来たが、最後の最後に山スキーの厳しさや一歩ミスすれば取り返しのつかいない自体に陥る事を改めて実感させられた山行となった。

YASUHIROさん、今シーズンは本当にありがとうございました。
スズケンさんもいろいろとありがとうございました。

これで今シーズンの山スキーは終わりかも知れない。
でも来週の水曜日は晴れるかな?そしたら山スキーかな?

戻る