厳冬期薬師岳
前夜仕事を終え20時半に白馬発。
松本経由でスタート地点の岐阜県神岡町和佐府に向かい、23時過ぎに到着。
既に大魔人さんは到着していて挨拶を済ます。
夕食は自宅で焼そば2人前を食べたが、移動中や到着後もバナナ、パン、アイス、ノニのエナジードリンク、を食べてエネルギーを蓄える。
YASUHIROさんとゲンゴロウさんは23時40分頃到着。
皆がそれぞれ準備をして、0時にスタート。
まずは約6kmの林道を歩いて飛越新道の起点である飛越トンネルを目指す。
数日前からの高温や降雨で融けた雪面が、本日の放射冷却現象で冷やされて雪面は締っておりラッセルなしでどんどん進む。
シールと雪が擦れる「ガリガリ」音の中、いろいろ会話しながら進み、約90分で飛越トンネルに到着。
飛越トンネルは半分以上に雪に埋まっていて今年の雪の多さを物語っていた。
ここからはトンネルの右にある沢を歩き、一気に標高を上げ飛越新道に合流。
飛越新道は細かいアップダウンの連続なので、YASUHIROさんが先頭になり上手にルート工作をしてくれ、自分は付いていくのみ。
何箇所も巻いていくルートは流石で、どんどん距離が進みあっという間に寺地山付近に到着。
この寺地山は標高が1996mで当初は1940mから巻きに入って1930mの鞍部に出る予定だったが、雪が大きく切れていたので1960m付近を巻いて進む。
巻いた後もYASUHIROさんを先頭に60分以上ノンストップで進んで、そろそろお腹がすいてきたという頃にようやく休憩になった。
休憩後は北ノ俣岳の稜線に向かうのだが、次第に雪面が氷化してきて、シールだけではスリップするのでクトーを装着。
クトー装着後は雪面に刃を噛ませながらどんどん登る。
この辺りから徐々に空が白んできて、ヘッドライトも不要になり、視界良好の中でガシガシ進む。
因みにこの頃は気温がマイナス10℃以下で、風もあり体感気温も低くなってきたので小休止のタイミングで皆が防寒対策を行う。
更に進むとやがて東の空がピンク色に染まってきた。
しかしまだ稜線には到達してないので、早く見たい一心で少しペースを上げて進む。
そして稜線へ。
稜線からは北アルプス南部の峰々が綺麗に見えており、その背景の雲がピンク色やオレンジ色に染まっていてとても綺麗だった。
暫く景色を楽しんでからシールを剥がして滑降モードへ。
まずは太郎山方面までの斜面を爽快に滑る。
そして太郎山の登りに差し掛かる箇所からは標高を落とさずにトラバース気味で薬師峠に向かう。
実は今回の山行ではこのトラバースが一番危険だった。
カチカチの斜面を滑落しないようにエッジを効かせて滑るので、体勢も中腰になり、腰や山側になる左足がとても辛かった。
皆が間隔を空けながら慎重に滑っていたのだが、ふと気付くと大魔人さんがかなり下に見えた。
後から聞いた話だが、実はこの時大魔人さんの板が外れてしまい10m程滑落してしまったらしい。
百戦錬磨の大魔人さんが引きつった顔で「かなり焦った」と言っていたので相当ヤバかったのだと思う。
大事に至らなくて良かったと心から思った。
幸いにも自分は滑落する事も無く無事に薬師峠下の沢に入れたので、ここで大魔人さんと合流してシールを貼りなおす。
この時点で20m上にゲンゴロウさんも確認出来たし、シールを貼っている最中に下部からYASUHIROさんも登ってきた事で全員の無事が確認できた。
その後はゲンゴロウさんだけ別のルートから進み、自分達三人はまとまって写真を撮り合いながらガシガシ進む。
空は白いが展望はバッチリなので素晴らしい景色を見ながらのハイクアップはとても軽快だった。
薬師岳山荘を過ぎた頃にはゲンゴロウさんも合流して4人で山頂を目指す。
そして開始から約10時間で標高2926mの厳冬期の薬師岳の山頂に到達。
山頂からは剱・立山・白馬・水晶・槍・穂高・有峰湖・白山等の大展望を楽しみながら20分程滞在。
そしていよいよお楽しみの滑降、と言いたいところだったが、斜面は相変わらずカチカチなので転倒しないように慎重に滑る。
ただ、景色は最高に素晴らしくて、これぞ「山スキー」といった感じ。
皆で写真を撮り合いながら滑り、あっという間に薬師岳山荘を通過。
その後も一気に薬師峠まで滑る。
薬師峠からは今回3度目のシール歩行で太郎平に向かう。
丁度その頃から徐々に青空も覗きだしてきて、雪山の白が一段と映えとても綺麗だった。
太郎平小屋には登り返し後20分程で到着。
最初に小屋を見た時は建物の一部が出ているだけかと思ったが、近づいてみるとそこは2階部分で1階は全て埋まっている事が判り、これには心底驚いた。
その後も太郎山を経由して北ノ俣岳の稜線(2624m地点)までシール歩行。
結局、薬師峠から2時間程掛かったが景色が最高だったので特に疲労する事も無く歩けた。
北ノ俣岳の稜線からはシールを外して滑降開始。
斜面は相変わらずカチカチなのでここでも転倒しないように慎重に滑る。
カチカチ以外にもシュカブラで出来た溝が至る所にあって難儀する場面もあったが、皆転倒もせずに飛越新道の稜線に到達。
ここからもYASUHIROさんを先頭に、往路のトレースをなぞりながら滑る。
その後も数々のアップダウンを巻いて、寺地山も巻いて、樹林帯でツリーランを楽しんで、飛越トンネルに到達。
飛越トンネルからは標高差475mの林道をひたすら滑り下る。
そして開始から約15時間40分後にスタート地点の和佐府地区に戻ってくる事が出来た。
今回の山行は総距離47.0km、累積標高差は3000m超、総時間15時間40分の長い長い行程だったが、四人全員が皆無事で達成できたことで達成感は半端ないし、一生の思い出にもなった。
更に「厳冬期薬師岳日帰り」という未だかつて誰も行った事が無い山行を完遂出来た事の喜びも大きくて、非常に遣り甲斐のある山行でもあった。
最後になりましたが今回誘っていただいたYASUHIROさん、メンバーの大魔人さん、ゲンゴロウさん、本当にありがとうございました。
完全に完全燃焼です、もう炭しか残ってません。