前日は仕事を終え、諸準備をし、20時半過ぎに白馬を出発。
新穂高温泉の集合場所には予定通り23時過ぎに到着。
既にYASUHIROさんが居て挨拶。
暫くして大魔人さんと同乗の北海道民パクミンがやってきて挨拶。
定刻の0時に右俣林道をシール歩行開始。
林道の積雪は5cm程度だが、年末年始に踏み固められた影響で快適な歩行で、林道終点の白出沢には70分程で到着。
パクミンや僕にとって厳冬期の槍ヶ岳は初めてだが、何度も経験のあるYASUHIROさんや、大魔人さんの経験上、ここからは登山道を進むより河原に下りた方が歩き易いみたい。
だがしかし、今年は暖冬で寡雪の為、河原を歩ける程の積雪は無く、仕方なくアップダウンの登山道を進む。
道中はパクミンといろいろと会話。
彼は厳冬期の山スキーで生還する為だけに無雪期にトレーニングをしてる、山スキーのモチベーションMAXの20代だった。
槍平には4時間掛からずに到着。
睡眠中の登山者が居る冬季小屋内で、物音を立てずにウールの中間着、防寒帽子、防寒手袋を装備して山頂への身支度を行う。
槍平を出てからは暫く緩い斜面を登って、飛騨沢の本格的な登りになるとトレースを外れて最短ルートでラッセル開始。
まずはパクミンがスーパーファットで先頭を行く。
YASUHIROさんや大魔人さんのHPでパクミンは体力抜群のラッセルマシーンと聞いていたのでお手並み拝見。
と言ってもラッセルは15cm程度なので二人でハイペースで登る。
この時は二人だけだったのでいろいろと会話が出来て楽しい時間だった。
飛騨沢を登り、標高2700mを越えると徐々に明るくなってきて飛騨乗越も確認。
しかし、雪煙が舞っていて暴風の予感。
更に標高を上げると、どんどん風が強くなり、雪も飛ばされ岩も露出して、雪面も凍結している個所も出てきた。
そして7時前に飛騨乗越に到着。
ここは飛騨側から猛烈な風が吹き込んでいて、立っているだけでも恐怖を覚えるくらいだった。
でも丁度御来光の時間だったので”案内標”に寄り掛かって写真撮影。
その後、とりあえずYASUHIROさんの陣取った場所(風下)に移動して、アイゼンを装着してスキー板とザックをデポ。
デジカメとウィペットだけを持っていざ槍ヶ岳の山頂へ。
まずは槍ヶ岳山荘に向かうのだが、夏道ルートでは暴風が吹いていてまともに歩けないので、上高地側の斜面をダブルアックスとアイゼンの前ヅメだけでトラバース気味に進む。
それでも暴風が吹き荒れていて、風で飛ばされた氷の粒が顔に当たって痛かった。
更に他のメンバーは地獄ゴーグルを装着しているのに対して、僕はオーバーグラスだったので隙間から氷の粒が進入してきて視界不良に陥りこれも大変だった。
この事で、今までは地獄ゴーグルは吹雪の時に必要と思っていたが、実は快晴でも暴風が吹いていたらそこは吹雪と同じで、地獄ゴーグル必須な環境ということが分かった。
暴風の中、なんとか槍ヶ岳山荘に到達して、更に槍の穂先の取り付きまで行くと、不思議と風は穏やかになり安堵。
その後はアイゼンの刃と革のグローブでしっかり三点支持をして、梯子や鎖も利用して槍ヶ岳の山頂へ。
そして開始から約8時間で日本で五番目に高い槍ヶ岳山頂に到着。
僕自身の山スキーの歴史の中でも一番高い山頂だった。
山頂では空は青空だったが、周りは全て雲に覆われていて展望は無し。
期待していた山頂からの穂高連峰を望む事は出来なかったが、それでも達成感は抜群なので嬉しかった。
結局、5分程の滞在で下山開始。
それでも諦めきれなかったので一番最後まで山頂に留まり、ガスが晴れるのを待っていたら、山の神からの御褒美でブロッケン現象を見る事が出来た。
復路は濃いガスの中慎重に下山。
槍ヶ岳山荘に着く頃には再び暴風が吹き荒れていて耐風姿勢を取りながら慎重に進む。
視界不良の中夏道を外れて、登ってきたトラバース斜面をダブルアックスで更に慎重に進み、荷物のデポ地点へ。
その後アイゼンを外して、シールを剥がしたスキー板を履いて飛騨乗越の稜線へ。
そこからは飛騨沢へエントリー。
滑り出しはアイスバーンで要注意だったが、標高を100m程落とすとモナカ雪で重めの雪だったが、フカフカなので楽しく滑る事が出来た。
天候は相変わらずのガスだし、雪質の影響で写真も少なめで滑降。
そして飛騨乗越から40分程で槍平小屋に到着。
その後は細いカチカチの登山道をなんとか滑って、滝谷付近でシールを装着して細かいアップダウンをシール歩行。
ようやくたどり着いた白出沢からはシールを剥がしてカチカチに踏み固められた林道を高速滑走。
実はこの林道が今回の滑りで一番楽しい個所だったかもしれない。
そして開始から約12時間で新穂高に戻ってくる事が出来た。
最期はYASUHIROさんや大魔人さんに遅れをとったが「おっ速いぜ〜、まだ10分程しか待ってないよ〜」と言われて少々ホッとした。
その後、片づけをしているとパクミンがやってきて挨拶をして全行程終了。
今回の山行は完全燃焼だった。
憧れの厳冬期槍ヶ岳を無事に完了する事が出来たし、一生の思い出になるような素晴らしい体験だった。
それもこれもYASUHIROさんや大魔人さんのお陰である。
単独だったら、ます挑戦しようと思わないし、もし挑戦したとしても飛騨乗越の暴風の中、山頂に向かおうとも思わなかったはずだし、絶対に戻っていたと思う。
ということで二人には本当に感謝している、そして初北アルプスが厳冬期槍ヶ岳だったパクミンもありがとうございました。
道中いろいろ話せて刺激になったしコラボ楽しかったです。
これからも安全第一で山スキーを楽しみましょう。
最後になりましたが、皆さんお疲れ様でした、そして本当にありがとうございました。
厳冬期槍ヶ岳完全燃焼です。